物に満たされ、生きることに対して全く危機感のない現在の子供たちの問題点を、厳しさという優しさで対応する阿久津真矢(天海祐希)に通して鋭く捉えていました。
真矢の与えた壁を和美(志田未来)や由介(松川尚瑠輝)を中心に6年3組の子供たちが一つ一つ乗り越えていく姿は、今の子供たちや親たちにも何か感じるものがあったと思います。
体罰やイジメなどの過剰な演出は、教育者や親たちを中心にかなりの苦情を日本テレビに寄せられたようです。
私自身も、序盤の内容についつい感情的になってしまった部分がありましたが、第一話での和美の過剰な演技も含めて完全に作者にハメられていたという感じです。
ハメられたと言うと言葉が悪いように感じますが、決してそうではなく、ストーリーに感情移入させたということです。
映画でもドラマでも、感情移入させることはその作品を決める重要なことです。
もちろん、それだけでは良いストーリーというわけではありません。
その感情移入させた気持ちを納得させて、しっかりとした訴えを視聴者に見せつけることが大事になってきます。
その重要なところが、「女王の教室」ではしっかり表現しきっていまいた。
子供たちがそれぞれ自分自身で常に考え、行動し、一生懸命生きることの重要さを教えて、親や教育者たちは、子供たちの壁となり、少しずつ障害を与え、子供たちを見守っていくことが自身の仕事であることを伝えていました。
また、子供たちの中で、人を動かすリーダー=和美がいて、共感する人、裏切る人、イジめる人、無関心な人と小さな人間社会が形成されていました。
その中で、どんなに辛い目にあっても、過ちを許し、真実を突き詰めようとする和美の姿を通して、リーダーとなるべき人の資質や重要性を表現していたところも、このドラマのクオリティーを高めていました。
若干、子供たちだけが頑張れば良いという内容になっていましたが、最終回に真矢が献身的に子供たちを見守っていたシーンを入れたことで、親や教育者たちの努力というものも必要なんだというメッセージがダイレクトに届いたと思います。
もちろんこのドラマに影響されすぎて、あそこまで極端なことをしろということではありません。
あくまで、この難しいテーマを誰にでもわかりやすいように演出して、このような話になっただけですから、親や教育者たちはもっと現実的な対応を取れば良いと思います。
現在の社会は、本質を見極めず偽善的な優しさが蔓延してると言わざるを得ませんが、一見、悪魔のような鬼教師である真矢が嫌われ役になって子供たちの成長を助けることを見せることで、本当の”やさしさ”というものを伝えていたと思います。
子供たちの顔色を伺うのではなく、親や教育者たちは自ら壁になってもらえれば、いい世の中になっていくのではないでしょうか。
だからといって、虐待を正当化するのは止めてもらいたいものです。子供たちのことを第一に考えて、客観的に必要な対応を取ることが大切だと思います。
このドラマでもう一つ話題になったのは、明るいエンディングですね〜
カットがかかり、阿久津真矢から天海祐希に戻る場面を写して、その後はポップフルなダンスシーン。
前回のレビューでも触れましたが、おそらく過激な内容の中和剤として考えていたのだと思いますが、ドラマのイメージが崩れるという意見も数多くありました。
しかし、後口ということを考えるとこれで良かったのではないかなと思います。
最終回の真矢と中学生になった和美の清清しい別れシーンの後で、暗い内容のエンディングだとせっかくのハッピーエンドが台無しですもんね〜
出会い系で小学生があのように5人の若い男に絡まれるなど若干無理のある設定もいくつかありましたが、全体の骨格がしっかりしており、演出も濁りがないほど一貫されており、イメージの統一が図られていました。
また、天海祐希の演技も相変わらず絶品で、子供たちの演技も日々上達していたと思います。
子供たちの中ではやはり志田未来と松川尚瑠輝に将来性を感じました。
特に、松川尚瑠輝のオチャらけた演技というのは実際難しいと思いますが、違和感なく演じ切ていたのはスゴいですよね〜
私の中でのドラマランキングでは、「ビューティフルライフ
ご覧になられていない方がいれば、ぜひすべて観てもらいたい!そんな作品です。
私見的評価 97点
『女王の教室スペシャル「エピソード1〜堕天使〜」「エピソード2〜悪魔降臨〜」』ページへ
『ドラマ 女王の教室 中間レビュー』ページへ
『ドラマ 女王の教室』ページへ